- 告白 -
 俺達はグラウンドにやって来て、スタートラインに立つ。
「向こうの白線がゴールね」
 指差しながら、早奈は言う。
「じゃぁいくよ。よ〜い―――――ドン!!」
 走り始めた俺は、もう必死だった。
「うぉおおおおおおおおおおおおおおお」
 その時のことは、もう覚えていない。必死過ぎて覚えていない。
 だから、記憶が戻るのは、走り終わった後に早奈に声をかけられてからだ。
「成田の勝ちぃ!」
 早奈は眩し過ぎる笑顔で俺を祝福してくれた。
 俺は、その笑顔にも喜んだが、何より早奈に勝てたことで―――――

 告白しよう。

 決意して。
「は、はやなっ」
「あっ! みんな呼んでる。ほら行こっ」
 早奈は行ってしまった。
 俺は慌てて付いていく。
 
 
 ◯


 次の日、早奈はアメリカへ旅立った。
 親の仕事の都合だったらしい。
 あまりにも突然の事だったので、クラスで彼女が別れを告げることは無かった。
「アメリカに行っても、みんなのことは忘れないから」
 あの日、始めて話せた日の部活ミーティング。
 そこで彼女はそう言った。
 誰もが唖然として――――富田も、青山も、そして俺も――――何も言えなかった。
 結局、俺は早奈に告白出来ずに終わった。
 その日、俺は家に帰って泣いた。
 涙が枯れても泣き続けた。
 声にならない声が、俺の部屋にこだました。


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