- エピローグ -
 あれから一カ月半が過ぎた。
 一月一日、元日の日。
 俺はこたつに入りながら、送られてきた年賀状をチェックしていた。
 富田のには、ありきたりな文章とあいつの妹の写真が(何故だか分からないが)貼ってある。
 青山のには、スタイリッシュな干支とともに、彼女と並んでニヤニヤ顔の写真が貼ってある。破り捨てようと思ったが、彼女が可愛くて諦めた。

 そして――――見慣れぬ英語の住所が書いてあるはがきを手に取り、俺は深呼吸をした。早奈からだ。
 別に、年賀状が送られてくること自体は想定していた。
 同じ部活の仲間だったのだ、俺に来てもおかしくは無い。
 それでも俺は大きな期待を持って、はがきを読んだ。
 そこには、こう書かれていた。


 よ、元気してるかい成田?
 私はとっても元気だよ。ロスの生活は楽しい!!
 実はここで重大発表。
 じゃじゃーん!! なんと来週にはそっちに戻ってこれるようになりました!!
 というわけで、あの時言いかけた言葉をちゃんと伝えてくれよん。
 今更だけど、あの時は私、突然の転校だったから、あんまし余裕がなかったんだ。
 ゴメンな。
 また一緒に陸上が出来るのを楽しみにしてるぞっ!
 私に負けたら承知しないからな。
 あ。あけましておめでとう!!忘れるところだったぁ。

 
 俺は無言でそのはがきをポケットに入れると、上着を脱いだ。
 勿論、下に来ているのは、スポーツウェア。
 外には軽く雪が積もっているが、関係無い。

 俺は走り出した。 

 どこまでも、どこまでも――――――
 

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