- 僕の主観 -
 とある極東の、とある海の真ん中に、その島はポツンとあるという。
 そこには、現代の病を専門に扱う『終身医療センター』という医療機関があるらしい。
 ……と、言われても、おそらく普通の人なら首をかしげるだろう。
 なんだかよくわからない。確かにそうだ。僕も最初は分からなかった。
 だから、ここは分かりやすく知ってもらうためにも、始めに僕からの主観を話したいと思う。
 
 
 ○
 
 
 まず、現代の病とは何か……といっても色々あるのだろう。というのが僕の見解だ。
 例えば、自傷行為。リストカットとかっていう奴だ。
 僕はもちろんやったことは無いけれど、学校にしばらく来てなかったクラスの女の子が、久しぶりに学校に来た時に見てしまった。
 ―――手首に深く刻まれた、痛々しい傷。
 そういえば、こんな話を聞いたことがあるだろうか。 
 チンパンジーはつねに群れで行動する動物である。そのチンパンジーを意図的に群れから引き離すという実験を、ある動物学者がやったそうだ。
 その結果、実験個体のチンパンジーは自らの体を傷つけ始めたという。
 おそらく、会話―――または諸々のコミュニケーションが不足してしまったために、このような事が起きてしまうらしい、という話だった。
 これは動物実験だが、人間の場合は実験をするまでもなく、沢山の例があるのが現実なのだ。
 不登校――――引きこもり―――ニート――――そんな風に呼ばれてしまうようになってしまったヒトの行く末を、この実験は暗に示しているのかもしれない。
 もうひとつ、面白い話がある。
 とある極北のペンギンは、個体が増え過ぎると自殺するそうだ。冷たい海の中に身投げするらしい。
 あの可愛らしい見た目とは裏腹に、とんでもないことを平然とやってのけるそうである。
 だが、これも別にペンギンに限った話ではないだろう。年間何万人もの人間が、様々な理由で自ら命を絶つ。
 これだって、ほかの生物からしたら、人間という生物はいとも簡単に命を捨てるのだなと思われても、可笑しく無いんじゃないかな。
 高度な市民社会の中に組み込まれた人間は、なんだか少し寂しくなりすぎたようである。
 だから、こんな島が出来てしまったんだろう。
 人が一番最後に来るべき所―――本当だったら来ない方がいい所。
 僕は今、この最後の島にいる。
 そして、今日も、この島にやってくる――――もう二度と本土に帰ることのないであろう人にこう言うのだ。
「最後の島へようこそ」
 と。

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